パートナー


(ばかみたい……。不毛だわ)
 ファリアはテーブルの向かい側に立っているモノを、半ば睨みつけるようにして見ながら椅子に座った。
(まったく、ばかげてる)
「何をそんなに不満そうな顔で見てるんですか。私はあなたが遅刻しないようにと、あなたの指定した時刻に起こしただけですよ。ほら、早く食べないと。遅刻してもいいんですか、ファリア?」
 ファリアの前に並んでいる朝食は、今朝はトーストにミルクティー、ベーコンエッグとサラダで、あるのは一人分、ファリアの分だけ。藍色の髪と、人工網膜の入ったアイスブルーの眼をした彼の分はない。用意したのは彼なのだが。
「わかってるわよ」
 ファリアは既にたっぷりとバターの塗ってあるトーストに手を伸ばした。
「あんたって最低ね、レイル」
 力一杯悪意を込めて言ってやったのだが、彼は微笑んで礼を言った。
「ありがとうございます」
 鋼並みの神経に──と言っても実際のところ、彼に神経などなかったのだが──ファリアは溜息をつく。
 彼、つまりレイルは人間ではなく、ロボットである。
 ファリアが三か月前に、一人暮らしを始めるにあたって彼女の父がプレゼントしたもので、少しばかり口出しが多いが、いいかげんなファリアには丁度いい性格をしている。彼は本来、家のコンピュータールームに鎮座しているメインコンピューターの一部であり、本体からどれだけ離れようと障害物があろうとそのつながりが切れることはないが、そのかわり、あまりないことだが本体の機能が停止すると彼のそれもまた停止してしまう。
 この時代、極度に金がなかったりしない限り必ず一家に一機あるこのコンピューターはその家の専用機パートナーと呼ばれ、目覚まし時計から電話、果ては家事全般に、望めば家庭教師まであらゆることをやってくれるすぐれものである(おまけにレイルは最新型だ)。
 そもそも、始めは本体のコンピュータ「レイル」のみが存在していた。
 しかしその場合、細かな作業は各部屋の天井で照明の後ろに収納されている、合成樹脂で表面を覆った見てくれのあまり良くないコードの先についた擬手が行うことになるのだが、しかしいかんせんそれは生まれた時から付属ロボットに世話をされて育ってきたファリアのお気に召さなかった。
『ロボット作ってよ、ロボット!』
 一人暮らしを始めて一週間、ついに我慢できなくなったファリアは言い放った。
『うちにいるケイン一・二号みたいなロボットを作んなさい。三日以内によ』
 ファリアの実家のパートナー「ケイン」は、付属ロボットを同じ顔だが肌の色を変えて二体持っていた。ファリアの家は家族四人で、一体では手が回らなかったからだ。
 とにかく、レイルは翌日材料を取り寄せてファリアの用がないときに組立を始め、二日目には大体が完成、三日目に人工皮膚等の表面を整え、完璧な人間型ロボットを作りあげた。レイルが工業用のコンピューターではないことを考えれば、その手際の良さはいっそ見事としか言いようのないもので、人間に真似のできることではなかった。
 完成したレイルを見てファリアはずいぶんと喜んだものだった。
 実家の「ケイン」からコピーしたファリアに関するデータに加えて、インプットし直した彼女の最新のデータのおかげでレイルの外見がきわめて彼女好みだったからである。
『えらい! レイル、あんたって最高よ!』
 思えばあれが彼女の苦悩のはじまりであった。
『ありがとうございます』
 いくぶんか照れたように──まったく、ここまで細かな機能をつけることはなかったのだ──生まれたばかりのレイルは笑って頭を下げた。
 ファリアはもう一度溜息をつき、フォークの先でサラダをつついた。
(本当に、ばかげてるわ)
 黙ってレイルを見つめる。
「おいしくないですか?」
 不安になったのか、レイルが尋ねて来た。ファリアは不機嫌な声で答える。
「おいしいわよ」
 にこっとレイルは笑った。ファリアは手に力を込める。
(パートナーに惚れるなんて!)

○      ○      ○

「だからさあ、ファリア」
 昼休み、スクールのクラスメート、シリィが言う。
「要するにその付属ロボットの顔を変えさせりゃいいのよ。そうすればちょっとはましになるんじゃない」
「……かなあ」
 仮にレイルに顔を作り変えさせたとしても、やはり自分はレイルが好きだろう。
 今となっては顔だけで彼が好きなわけではないのだ。
 ファリアはコーヒーにミルクを落とした。
 けれど、だからといってわざわざレイルの顔を変えさせるのは喜ばしいことではない。
「それは……やだな」
 呟いて、コーヒーをかきまぜる。
「それだから駄目なんじゃない。だいたいそんな高性能のパートナー、買うのがいけないのよ。あたしのセイランは中古だから二十年前の型だけど、充分間に合ってるわよ」
 いいかげん科学の発達も限界に届きつつある近頃は、十年前の型と今年の最新型を比べてもさほど大きな違いはない。少しばかり使い勝手が良くなっている程度で、中には三、四十年前から同じパートナーを使っている家庭も少なくない。
 一番初めの頃に作られたパートナーなども歴史科学博物館にあるが、未だ健在で館内の掃除や見学者への説明などもやってしまう。
「そんなこと言ったって、あたしが最新型にしてって頼んだわけじゃないもの」
 ファリアは不服そうにシリィを見た。
 確かにファリアが頼んだわけではなかった。ファリアの父が我が子かわいさに最新型を購入したわけだが、ファリア自身は十年や二十年前の型でも構わなかったのだ。
「おや、そうだったんですか」
 後ろから聞き慣れた声がしたのはその時だった。
 思わずファリアはとびのきかけ、慌てておしとどまるとうわずった声をあげた。
「な、なんで……レイル!」
「はい?」
「どこから聞いてたの、何でこんなとこにいるの、ここがどこだかわかってるの!?」
 一番聞かれては困る相手が、いるはずのない所に現れたのだから、誰だって驚くに決まっている。
「わかってますよ。ここはスクールです、ロボットには用のない」
 シリィは大昔のことわざ通り現れた「影」を興味深げに眺めた。レイルは主人の狼狽ぶりに微笑みつつ、答える。
「聞いたのは『高性能なパートナー、買うのがいけない』というところからで、ここに来たのは至急の用事があるからです。──ああ、大丈夫ですよ、目立たないようにレンズ入れてますから」
 虹彩のない、一目で人間ではないことがわかる彼の目には瞳孔を模した絵のついたコンタクトレンズが入っていた。
 ファリアは立ち上がると、ぐいと彼の藍色の前髪を持ち上げ、その眼をのぞき込んだ。
「見づらくない?」
 こうしてみると、つくづく機械にしておくのがもったいない。
 ましてレイルは感情表現の幅が広くなっているから、なまじ無愛想な人間よりもよほど人間らしい。
「まあ、多少は。でも動くのに支障はありません。ところで……」
 レイルは穏やかに笑ってファリアの手から逃れると、軽く睨みつけた。
「今日も遅刻しましたね、ファリア」
(ぎく!)
 ほんの数十秒差だったが、コンピュータは無情だ。しっかり遅刻にされてしまった。
「スクールのコンピュータから警告がありました。情報構造、つまり今日の一時限目の授業と現代社会学──次の時間ですね、その二つの学科ですが、あと一回欠席したら単位取消、それと古代歴史学も二回欠席で取消です。明日から三十分早く起こしますから、そのつもりでいてください」
 そんなに休んだ記憶はない、と言おうとしたが、二回遅刻で一回の欠席扱いになるのだから、考えてみれば当然かもしれない。
「そ、そんなのあんたがちゃんと起こしてくれないのが悪いんじゃない!」
「あれ以上、どうやってちゃんと起こせと言うんですか」
 ファリアは八つ当たりのお返しに冷ややかな一瞥をいただいてしまった。
「毎朝、起こしに行けば十分後まで放っておいてくれだの、うるさいでてけだの、メイルのくせに女の寝てるところに入るなだの、めちゃくちゃに言われながらも起こしているのは誰だと思っているんですか?」
 とにかくファリアは寝起きが悪い。毎朝、最初に起こされてから起き出すまで一時間はかかっている。シリィが笑いを必死でこらえているのに気付いて、腹が立った。
「わかった、あたしが悪かったわよ。次の授業もちゃんと出る。それでいいんでしょ」
「はい。それでは私はこれで帰りますが、蛇足ながら二十年前の型のパートナーは、朝主人に『うるさい、あっち行って』と言われたら根気よく起こしてなんてくれませんよ。今よりずっと素直ですからね」
 皮肉たっぷりの笑顔でそういってレイルが行ってしまってから、苦虫をかみつぶした顔のファリアにシリィの言葉が追い打ちをかけた。
「ファリア、あんたって面食いね」

○      ○      ○

「は? あの……それはどういう意味でしょう」
 シリィにそそのかされてしょっちゅうさぼっていた現代社会学の授業後、ファリアは教授に問い返した。
「ファリア・キリシア……君に資料を集めてきてもらいたい」
 ぶあつい眼鏡の向こうから、教授の眼がファリアを睨んだ。どうやらあまりにも彼女が授業に出ない学生なので怒っているらしい。
「それはわかりました、教授」
(ったく、シリィのやつ、自分が現社とってないからって!)
 ファリアは内心悪友を毒づきながら教授を見返す。そういう不敵な態度が良い結果を招いた試しのないことくらいわかっているけれど、自分はこういう性格なのだから仕方がない。
「よろしい、もう一度言おう。ザンティアの資料を集めてきたまえ、現場の生の資料が欲しい。危険なので友達を誘ったりはせぬように。パートナーの同行は認める」
 ぎょっとしたような顔で、教室を出ようとしていた学生が振り返った。
 ザンティアというのは政府の圧力でついこの間滅ぼされた都市である。今はまだ行くのが危険な場所だ。
「仰る意味がわかりませんが」
「君が集めるんだ。映像と……そうだな、あとは壊れた物の破片などの、様子が生々しいものがいい。ただし、死体は持ち帰らないように」
「授業に必要なんですね。わかりました」
 ファリアは無表情で頷き、席を立った。

○      ○      ○

「ファリア、なんてことを!」
「うるさいわね、放っといてよ!」
 ファリアの家のコンピュータールームに、レイルとファリアの怒鳴り声が響いた。
「なぜ断らなかったんです!?」
「いいじゃない、立入禁止のザンティアに特別許可で入れるんだから」
 ファリアは目をそらし、口調は強気に言った。
「どうして、ザンティアだけは行けないと言わなかったんです」
 悲しげな声。
 その合間にも、メインコンピューターはスクールのコンピューターに物凄い勢いでメッセージを送っている。
“ファリア・キリシアハ、ザンティアニ入ルコトハデキナイ。資料収集場所ノ変更ヲ要求スル”
“要求ノ正当ナ理由ヲ説明セヨ”
 レイルの背後にあるスクリーンにメッセージが次々と現れる。
「あたしは行きたいんだもの」
 余計なことをしないで、と交信を切ろうとしたファリアの手をレイルが止める。 「行けば、傷つくのはあなたなんですよ」
“ファリア・キリシアノ本籍地ハザンティアデアル。ファリア・キリシアハ家族ヲ全テザンティアデ亡クシテイル”
「わかってるわよ、そんなこと!」
 悲鳴のような声でファリアは叫んだ。
 スクリーンに映るレイルの交信文が彼女の胸に突き刺さった。
『ファリア・キリシアの本籍地はザンティアである。ファリア・キリシアは家族を全てザンティアで亡くしている』
“彼女ガザンティアニ行クコトハ、ソノ精神へ与エル影響ガ大キスギル。資料収集場所ノ変更ヲ要求スル。繰リ返ス、資料収集場所ノ変更ヲ要求スル!”
「でも、このままじゃかわいそう。お父さんと、お母さんとヴァルク、それにケインがかわいそうじゃない」
 ファリアは俯いた。
 二か月前、突然家族を失った。少し離れた所にあるスクールに通うため、一人暮らしを始めてから一か月しか経っていなかった。父と母、そして弟のヴァルク、全員が一瞬で……一瞬で灰と化した。そして、パートナーのケインも。
“以上ノ理由デハ要求ニ応ジラレナイ。教授ヲ直接説得セヨ”
 プツリとスクールのコンピューターは交信を打ち切った。
 政府のやり方にそわない都市は、人口過剰問題にかこつけてまるごと消される──予告もなく。三千年も昔の国の名を未だその地に残していた、かつての火の国。火よりも強い科学兵器で、何があったのかも知らぬまま一瞬にして消え去った。
 こんなやりかたは、残酷だ。一人取り残された自分は、このさみしさを、この悲しみをどうすればいいのだ。
「ファリア……」
「遺体は見つからないかもしれないけど、遺品は探し出せるかもしれないじゃない」
 ファリアの元に残っているものは、父が贈ってくれたパートナーのレイルだけだ。たった、それだけ。
 頭上でレイルの人間くさい溜息を聞いた。
「仕方ありませんね。行きましょう。ただし、あなたは都市の入口までですよ。中へは私が入ります。子供の頃、昔の戦争映画で気を失ったこと、忘れたわけじゃないでしょう」
 本物はあんなものじゃありませんよ。
 ファリアは驚いてレイルを見上げ、それから彼の肩に手をかけると小さく笑って下を向いた。
「嫌いよ。あたしはあんたを使い始めてから三か月しか経ってないのに、あんたはあたしのこと、みんな知ってるんだもの」
「仕方ないでしょう」
 レイルの声は、優しかった。機械のくせに優しいから、泣きたくなる。
「ケインの記憶──ファリアに関するものは、私の中にもあるんですから」
 レイルは火の国の民のその象徴、ファリアの赤い髪をそっと撫でた。

○      ○      ○

「ここは……どこなの?」
 ファリアは茫然と呟いた。
 政府は一つ都市を滅ぼすとそこをドームで二重に覆い、人の目から隠す。その後三十年そこは放置され、やがてドームが取り壊されると、新たな住人が送り込まれる。
 外側の真っ白なドームに入り、中側の半透明なドームを通してザンティアの廃墟を目にしたファリアは思わず口元を押さえ、地面に膝をついた。
「ファリア──ファリア。大丈夫ですか、吐きますか?」
 レイルはかがんでファリアの顔をのぞきこんだ。落ち着くために大きく息を吸う。
「大丈夫よ。……大丈夫、行って。気をつけてね。無理しないで」
「──はい。中へ入ろうなんて事、考えないでくださいね」
 ファリアが教授から受け取ってきたカードをレイルが差し込むと、キュンと音を立ててドームの入口が開いた。奇妙な、焦げ臭いような生臭いような臭いが中から流れて来、ファリアは息を飲んだ。
 行きます、とレイルはためらわずまっすぐに入っていく。ドームの内側に出てきたカードを受け取ると入口が閉まり、二人の間に壁ができた。
「レイル──」
 こんなのは、間違ってる。戦争のないこの時代に、戦い方を忘れた人間をこんなやり方で殺すなんて、あんまりだ。
 家族も死んだ。友人も死んだ。そして多くの人々とたくさんの専用機が消えていった。
 ファリアはレイルを待ちながら独りで泣いた。死んでいった人々のために、取り残された自分のために。

○           ○           ○

「戻りました、マスター」
 レイルは中側のドームを出るとファリアに笑いかけた。
「……マスターなんて呼ばないで」
 彼が中に入っていった時と同じ場所にしゃがみこんでいたファリアは、下を向いたままかすれた小さな声で言った。
「泣いていたんですか?」
「泣いてないわよ」
 すぐに嘘だとわかる真っ赤な目でファリアはレイルを見、驚いて立ち上がった。
「どうしたの!?」
「パートナーが一機、動けるのがあったんですが狂っていて、攻撃されたんです。でも大丈夫ですよ。ちゃんと今日中に直せますから、擬手で不愉快な思いはさせません」
 レイルは肘から先のない左腕を振り回してみせた。そのパートナーがファリアの家のケインだったということは、彼女には言わない。言ってはいけない。
「馬鹿! そんなこと言ってないでしょ!!」
 ファリアは怒鳴った。
「ロボットの怪我なんか、心配したあたしが馬鹿だったわ」
 ふいと横を向いたファリアにレイルは微笑んだ。
「ありがとうございます。帰りましょう、ファリア」
 帰る途中のエア・カーの中、片腕では運転出来ないので自動運転にしたファリアの隣でレイルはぽつりと呟いた。
「ファリア、あなたは寂しかったんですよ」
(だからこれは恋ではないと、そう言いたいの? レイル)
 自分の心を見透かされている、そんな気がした。

○      ○      ○

 ファリアの家。
「これがフィルムと、丁度いいと思われる資料です。どうぞ」
 レイルに手渡された、小さなフィルムと中に何か入っているらしい銀色のアルミのケースをファリアはじっと見つめた。
「今日届けに行きますか?」
 レイルの問いにファリアは首を振った。
「ね、レイル」
「何でしょう?」
「これを持って行かなかったら単位貰えないんだけど、持って行かなかったら、レイル怒る?」
 ザンティアをあんな風にしたのが教授じゃないことくらい、良く分かっている。
 けれど許せなかった。見る影もない自分の故郷を、つまらない研究のための資料と見なした、あんな人間の授業など受けたくない。おまけにレイルもすぐに修理できる程度だったとはいえ、大怪我をした。人間なら、へたをすれば出血多量で死んでいる。
「レイル?」
 彼が答えずにファリアを見つめているので彼女は再び聞いた。
「……このフィルム、空なんです」
 レイルはファリアの手からそれを取り上げ、レイルの本体にセットした。
 スクリーンには何も映らない。ファリアはレイルを見上げた。
「──?」
「現代社会学は単位落として結構です。私が許します。ただし、それ以上落としたら卒業できませんからね」
 にっこり笑ってレイルはファリアの手の中でアルミケースを開いた。
 入っていたのは、フォトスタンド。ガラスが割れただけでほとんど無傷だ。
 二年程前の、家族とケイン一・二号と一緒に撮った写真。これならば、教授に渡したところで彼の役には立たなかっただろう。
 ファリアだけに価値のあるものだ。
「最初から、そのつもりで?」
 震える声で尋ねたファリアにレイルは頷いた。
「いくらあなたが不真面目な学生でも、こんな仕打ちはやり過ぎですからね。ファリアの欲しい物だけあれば充分でしょう」
「レイル──レイル、あんたって最高の相棒パートナーね!」
「そうでしょう」
 微笑んでそう言ってからレイルは電子頭脳の心の中で呟いた。
(二十世紀の昔には、パートナーという言葉には夫婦という意味もあったんですよ、ファリア。でもそれは、あなたは知らない方がいいですね)
 頭のいいパートナーは主人の気持ちぐらい、とっくの昔に知っていた。
 だがそれは、初めの一か月こそ外見への好意と興味だったかもしれないが、後の二か月はザンティアが無くなったその日さえ、スクールのクラスメートに自分がザンティアの人間だと気付かせなかったくらい動揺を人に見せず、自らの中で押し潰した彼女の心の歪みだ。決して恋ではない。
 けれど──そう、けれど。
(私はあなただけを見つめていますよ。そうブロックされているし、それがパートナーの役目ですから)

 個人、あるいは一つの家族、それ専用の家庭用多機能コンピュータ──専用機パートナー
 ファリア・キリシアがパートナー「レイル」を手放すことは、生涯なかった。

END      




 学生時代に部誌に載せたものです。
 結構「メルヒェン(byポスペ)」で私としては恥ずかしい作品かもしれないです。
 古いだけあって、表現がというか、文章が……(以下略)


Absence.
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